さとう特許商標事務所

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自動運転の特許出願をテキスト分析してみる

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先日、ニューラルネットワークに関係する自動運転の特許出願のうち、タカタ株式会社の特願平4-229201(特開平6-60300)の被引用数について、23件と書きましたが、現時点では、29件になっているようです。半月くらいで、随分と増えました。

さて、テキストマイニングとまでは行きませんが、初歩的なテキスト分析をしてみましょう。上記のタカタ株式会社の特願平4-229201は、特公平7-85280(以下、公報例1)としても公開されているので、こちらを用いてみましょう。フリーのKH-Coderを使ってみました。

繰り返しになりますが、公報例1の請求項1は、
「走行する車両から視認できる種々の対象物と前記車両とが衝突する直前から衝突発生に至るまでの前記車両から撮像した多種の実写画像を、学習画像データ群として神経回路網に入力して学習演算により前記神経回路網を学習させ、学習完了した神経回路網を衝突予測回路として実車に搭載し、該実車の走行時に撮像手段によりリアルタイムで撮像収集された実画像データを、前記衝突予測回路に所定幅のデータセットで逐次入力し、前記実画像データが学習後の衝突発生の特徴に一致するか否かを、前記神経回路網の学習結果に基づいて前記衝突予測回路で判定し、衝突発生の画像特徴と一致すると認識された場合に、前記神経回路網から衝突発生フラグ信号を車両走行安全保持手段に出力し、前記車両走行安全保持手段が所定の安全保持動作をとるようにしたことを特徴とする神経回路網による衝突予測判定システム。」
となっています。

課題には「自動車の衝突直前に至るまでの種々の状態を捉えた画像データをあらかじめ神経回路網有するシステム内に取り込み、神経回路網での並列処理による自己組織化・学習により学習させ、走行中に得られたデータをもとに、衝突の発生の有無を予測判定し、その判定信号をもとに、乗員を保護するための種々の車両走行安全保持手段を的確に動作させ、衝突を予防し、あるいは乗員身体の安全を図る」とありますので、車両から撮像した画像で神経回路網を学習させて、学習した神経回路網で走行中に撮像した画像から衝突の発生の有無を予測判定する点、ストレートな内容かと思います。

公報例1のテキストから日本語形態素解析ソフトの「茶筌」を使って語を抽出します。茶筌は、KH-Coderに含まれています。例えば、このように抽出されます。

抽出語    品詞    出現回数
する     動詞B    311
神経回路網  タグ     79
衝突     サ変名詞   54
学習     サ変名詞   51
できる    動詞B     42
入力     サ変名詞   27
にる     動詞B     23
画像データ  タグ     23
PE     タグ     22
なる     動詞B     22
衝突発生   タグ     22




この後の処理では、「する」や「できる」などは無視されます。

語の抽出の際には、「発明」などの特許用語や「前記」や「上記」などの明細書に慣用的に使う語句は、無視させると良いようです。
また、明細書や特許請求の範囲には、「実写画像」や「学習画像データ群」などの複合語が良く使用されますので、このような複合語を検出して強制抽出するといい感じになります。KH-Coderには、複合語の検出をする「TermExtract」も入ってます。


パラメータを調整して、共起ネットワークを作ってみると、図のようになります。共起ネットワークは、関連が特に強い語同士を線で結んだものです。円の大きさは頻度を示しています。共起ネットワークからは、「神経回路網」、「学習」および「衝突」の結びつきが強く、頻度が大きいことがわかります。
共起ネットワークの「神経回路網」、「学習」および「衝突」を含むサブグラフには、「自動車」、「走行」、「搭載」および「撮像手段」の部分や、「実写画像」、「衝突直前」および「バックプロパゲーション」の部分なども含まれています。

この共起ネットワークは、公報例1の請求項1の特徴的な部分を表しているのではないでしょうか。

自己組織化マップも作成してみましたが、特徴を表すには、もう少しパラメータの調整が必要のようです。

写真

作成日時
2021年5月17日19:35

更新日時
2021年5月17日19:41