さとう特許商標事務所

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AI関連発明のクレーム

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特許の分野で、クレームとは、特許請求の範囲の請求項のことです。

請求項が1つの発明を表していて、特許になった場合には、技術的範囲が請求項の記載で特定されます。つまり、請求項の記載の内容で、特許権の範囲が変わるということです。

通常、ソフトウェア関連発明(IT分野の発明)の場合、システム、装置、方法、プログラムなどのそれぞれについて請求項を記載することが多いです。

また、ソフトウェア関連発明については、「データ構造」や「構造を有するデータ」なども認められています。・・・結構制約はあるのですが・・・。

勿論、AI関連発明を出願する場合、これらについてクレームを検討する必要があるでしょう。

これに加えて、AI関連発明を出願する場合、「モデル」、「学習」または「教師」などについても考えておくことが重要でしょう。

「モデル」そのものも勿論ですが、
例えば、「モデルの学習方法」、「モデルの生成方法」、「学習済みモデルの生成方法」、「学習済みモデルの生産方法」などです。

特許庁は、審査では、請求項の末尾が「モデル」 であっても、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮すると、請求項に係る発明が「プログラム」であることが明確な場合は、「プログラム」として扱われるとしています。

「モデルの学習方法」と記載すると、請求項の末尾が「モデル」 ではありませんが、上記に準じて考えれば良いと思われます。

ここで考えておくべきは、「モデルの学習方法」と「モデルの生成方法」とは、特許になったときの効力の範囲が変わるだろうということです。

特許法では、「物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等・・・をする行為」(二条3項一号)にあるように、プログラム等は、物として扱われます。

「モデルの学習方法」は、特許法でいうところの「方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為」(二条3項二号)の方法に該当すると考えられます。(単純方法などと言われます。)

一方で、「モデルの生成方法」は、「物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(二条3項三号)の方法と解される可能性があります。

結構違いがありますね。
「モデルの生成方法」が使えるかは、具体的な発明の内容によります。

少なくとも「モデルの生成方法」の場合、「モデル」について、「物」だと主張できるように、ある程度しっかり記載する必要はありそうです。

但し、「学習」が、「機械学習アルゴリズムを活用してトレーニングしながら、「機械学習のモデルを構築していく」こと」とすると、「学習方法」は「生成方法」だと主張できるかもしれません。

また、逆に、「モデルの学習方法」では、「モデル」が物であることにとらわれないので、その点、より広いクレームの記載とできるかもしれません。

案件毎に十分な検討が必要です。

同様に、「学習データの生成方法」、「教師データの生成方法」、「○○の構造を有する学習用のデータの生産方法」なども考えてみる必要があります。

なお、ここに記載したことは、日本の特許のことで、特許庁の審査の考え方をベースにしたものです。日本の訴訟で認められるかどうかは、また、別の話です。

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作成日時
2024年6月18日9:57

更新日時
2024年6月18日15:31